ひと月ぐらい前の事だったと思う。
どこで見かけたのかすっかり忘れてしまったが、
多分、コスモス(ドラッグストアー)だったと思う。
その女性は右足にスーパーのレジ袋を靴代わりに履いて、ガシャガシャと歩いていたのである。
あー、あの時の息子と全く一緒だ、と懐かしの風景を思い出し微笑んだのだ。
それはもう十年以上前の事、彼が高校一年の確か十月の末だった。
登山部の彼は、新人の大会で藺牟田池に行っていた。
テントを張って時間があったのでラサールとサッカーをやる事になった。
彼等は部活と称してよくフットサルみたいな事をやっていたらしい。
ここでも仲良くサッカーに講じていると、シュートチャンスが巡って来て
思いっきり蹴ったら、ボールを蹴らずに地面の岩を蹴ってしまった。
爪が剥がれ、ドンドン痛くなったので、翌日、急遽帰って病院へ行くと、
親指が折れていてギブスをはめる事になった。
当然ギブスと包帯で大きくなった足に靴は入らない。
どうしたものか病院の先生に聞くと
「スーパーのレジ袋を履けば大丈夫」
言われるまま彼はレジ袋を履いて学校へ行くと、友達に大笑いされて
「もうあの病院には行かん」
あの先生が同級生の父親だと知ると
「子も子なら親も親だ」
と憤慨していた。
「靴を買いに連れて行け」
と言うので
「靴を買うのはもったいないだろう、サンダルが良い」
と諭し、直ぐにそのまま靴屋に行ったがこの季節にサンダルは無く、
ディスカウントショップで大きなサンダルを見つけ、片方は靴、片方はサンダルで
学校に通ったのである。
彼女を見てそんな事を思い出した。
結構長い事通院して、送り迎えが大変だったが今では懐かしい思い出だ。
因に彼は、次の冬にも部活でサッカーをやっていて手の親指を骨折したのである。